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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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食品開発とAI

No.248


 先日、日本電子株式会社と株式会社やなかコーヒーが、AIを利用したブレンドコーヒーを開発したというニュースがありました。「飲める文庫」というちょっと気になる商品です(2017/10/27販売開始)。


 昨今、至るところに登場するAIです。あらためて調べてみると、AI技術は、「学習」、「認識・理解」、「予測・推論」、「計画・最適化」といった人間の知的活動をコンピュータで実現するものです。とくに近年注目されているのは、AIの「機械学習」と呼ばれる部分です。機械学習は、人間の学習能力をコンピュータで実現する技術です。収集した膨大な情報からルールを見出して、将来予測や計画立案・最適化などにも使われるようになっているようです。


 すでに、AIの新商品開発への活用は結構試みられています。まず、AIで行われるのは、消費者からのニーズを集めて要因を抽出、そして仮説の設定と検証です。AIが正しいと判断した仮説と、人間が正しいと判断する仮設から、「承認仮説」を得れば、市場に受け入れられる可能性の高い商品が開発できるのは、素人の私にもなんとなく理解できます。


 冒頭のコーヒーの話に戻ります。ネットで入手しようとしたところ、発売直後だったにかかわらず、すでに完売でした。店頭では入手可能とのことだったので、東京出張の折に、東京駅から比較的近い「やなか珈琲店」のコレド室町店に寄ってみました。


 非常に小さな店舗に驚きましたが、目的とする「飲める文庫」は6種類すべてが揃っており、無事入手することができました。パッケージからお分かりになるように、いずれのブレンドも、日本を代表する名作小説のタイトルが付けられています。


 店頭に置かれてあったパンフレットの文面を、以下にそのまま引用します。「小説の読後感を、珈琲の味わいに。世界に誇るAI技術群『NEC the WISE』に日本の名作小説の読後感を学習させ、珈琲のテイストとして再現しました。最新のAIテクノロジーが綴る、文学と珈琲の新しい物語をどうぞ召し上がれ。」NECは、人と人工知能(AI)が協調して知性を高め合い、安全・安心・効率・公平な社会の実現に貢献するAI技術群のブランド名称を「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)としています。詳しくは、NECのホームページをご覧ください。


 「飲める文庫」のパンフレットには、それぞれの商品(コーヒー豆)の解説が載っています。一例として、「人間失格ブレンド」のものを転載させていただきます。


 詳しい解説はこちらに譲りますが、まず「人間失格」など文学作品の読後感をコーヒーの味覚指標(苦味/甘味/余韻/クリア感/飲みごたえ)に変換した学習データを作成するそうです。このデータを「NEC the WISE」に投入して分析モデルを作成し、これを用いて読後感から味覚指標のレダーチャートが作られます。示された風味を得るために、最終的にカップテスターが商品を開発するとのです。人間失格の場合、苦味、クリア感、余韻が強いという特徴が示され、コーヒー豆として、コロンビア、ブラジル、ペルーが選らばれ、フルシティーローストが行われています。


 実際に、6種類のブレンド豆で淹れたコーヒーを飲んでみました。それぞれの風味はかなり個性的で、コーヒー通ではない私でも、明らかな違いがあることはわかりました。商品の評価は難しいですが、AIがなければ誕生しなかったものなのでしょう。現時点では、AIを用いて開発した食品は、話題作りの面が強いことが否めませんが、やがてAIならではの商品が登場してくるのだと思います。近い将来、食品開発の現場が様変わりすることもあるのかもしれません。

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171:鼻焼肉(2014/08/25)
72:ロングセラー食品の秘密(2010/07/12)
52:売れないのは誰のせい?(2009/09/11)
48:味覚センサーの導入(2009/07/10)
41:だから売れた!(2009/03/25)
食品のトピックス | 12:22 | 2017.11.10 Friday |