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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ココナッツグルトと中鎖脂肪酸

No.276


 今回紹介するのは、「ココナッツグルト」です。ココナッツミルクは、いわゆる「スーパーフード」として注目されている食品の一つです。ココナッツミルクを植物性乳酸菌で発酵させてヨーグルト状に仕上げたのが、ココナッツグルトです。


 このココナッツグルトは、森をつくる農業「アグロフォレストリー」に注目した事業を展開している「フルッタフルッタ」という会社の製品です。


 ココナッツグルトの特徴のひとつが、「中鎖脂肪酸」の存在です。ココナッツミルクに豊富に含まれる中鎖脂肪酸に注目した製品で、蓋にも強調されています。


 中鎖脂肪酸を論じる前に、脂肪酸について説明しておきます。脂肪酸は、下の図に示したような構造の物質で、炭素原子(C)が鎖状につながっているのが特徴です。炭素数が2〜4個のものを短鎖脂肪酸、5〜12個のものを中鎖脂肪酸、13個以上のものを長鎖脂肪酸と呼ぶことが多いようです(この分類には諸説あり)。


 中鎖脂肪酸を比較的多く含む身近な食品として、牛乳があります。しかし、ココナッツオイルに含まれる量にはかないません。ココナッツオイルの主要な中鎖脂肪酸として、カプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)があります。下にあげたのは、最も多く含まれるラウリン酸の分子モデルです。


 では、ラウリン酸などの中鎖脂肪酸は、どのような働きをもっているのでしょうか。中鎖脂肪酸の大きな特徴として、摂取した際にエネルギーとして利用されやすく、体脂肪になりにくいことがあげられます。中鎖脂肪酸を多く含む油は、腎臓病の食事療法、手術後のエネルギー補給、高齢者の栄養状態改善、スポーツ選手の食事などにも利用されています。最近の研究では、中鎖脂肪酸が認知機能改善に寄与することも示唆されています。


 今回紹介したココナッツグルトは、九州乳業という会社の工場で製造されています。大分県から、はるばる青森県まで運ばれています。現在、ココナッツグルトは、本州・四国の「イオン」でのみ販売されているそうです。ヨーグルトとはかなり違った不思議な食感で、私は結構気に入っています。

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食品のトピックス | 14:38 | 2019.01.10 Thursday |