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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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乳児用液体ミルク

No.286


 「乳児用液体ミルク」は、海外ではさほど珍しいものではありませんが、日本では長らく製造・販売が許可されていませんでした。東日本大震災の際に、乳児用液体ミルクの有用性が話題になりました。また、熊本・大分地震の被災地には、フィンランドのValio社の製品(下写真)が届けられ喜ばれました。


 液体ミルクは常温保存ができ、災害時や旅行先などで役立つものですが、日本での製品化はなかなか実現しませんでした。乳製品に関する省令によると、乳児用の「調製粉乳」の定義を、「生乳や牛乳などを主要原料とし乳幼児に必要な栄養素を加え“粉末状”にしたもの」としており、液体ミルクを想定していませんでした。このような法令による制約があったことは事実ですが、メーカー側も積極的に法令改正を要請してこなかったようです。


 今年4月(2019/4/5)に江崎グリコが「アイクレオ赤ちゃんミルク」を発売し、明治も4月下旬から「明治ほほえみ らくらくミルク」の全国販売を開始しました(下写真)。前者は紙パック入りで賞味期限が6か月、後者はスチール缶入りで1年の賞味期限です(いずれも常温保存)。これらは、待望の国産乳児用液体ミルクと言ってよいでしょう。


 世界の乳児ミルク市場では、液体ミルクは10〜20%程度を占めており、それほど特殊なものではありません。明治は、日本国内の液体ミルク市場の規模を30〜60億円と予想しています。しかし、これは大手メーカーにとってさほど大きな市場規模ではなく、社会的使命として取り組むとのことです。


 日本小児科学会は、大規模災害時における乳児栄養の確保を目的に、液体ミルクの国家備蓄に関する要望書を内閣府に提出するなどの働きかけを行っています。すでに備蓄を始めた自治体もあり、今後各地での備蓄が進むものと期待されています。

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食品のトピックス | 11:12 | 2019.06.10 Monday |