2019.07.25 Thursday
ヨーグル糖とヨーグル豚
No.289
先日、スーパーで「ヨーグル糖」という製品を見つけました(下写真)。パッケージには、「北海道産のてん菜から生まれたオリゴ糖」とあります。「善玉菌であるビフィズス菌、乳酸菌はオリゴ糖が大好き!」とも書かれていますので、いわゆるプレバイオティクス(prebiotics)をコンセプトとする製品です。
今回は、この製品の中身ではなく、「ヨーグル糖」という製品名に注目してみます。製品名の右下に、小さく「R」の文字があります(下写真)。「Registered Trademark」(登録商標)の頭文字です。
商標については、ずいぶん前に「食品と商標」で解説していますので、そちらもご覧ください。「ヨーグル糖」は、2017年1月に特許庁に出願され、2017年8月に登録されています。出願人は、株式会社加藤美蜂園本舗です。「サクラ印ハチミツ」の会社です。
「ヨーグル糖」というネーミングは、「ヨーグルト用のオリゴ糖」という製品コンセプトによく合致したよいものです。親しみやすく、覚えやすいようにも感じられます。ヨーグルトを連想させるネーミングは多く、スーパーなどでよく目にします。商標として特許庁に出願されたものは、「特許情報プラットフォーム」を使えば、どなたでも簡単に検索できます。
簡易検索画面なら、操作は適当なキーワードを入力するだけです。「ヨーグル」をキーワードとして検索すると、511件がヒットしました。下に示したように、出願(登録)番号、商標、呼称、出願人といった一覧表が表示されます(下写真)。511件中の6件だけを示していますが、それでも字が小さいので読むのは難しいかと思います。ぜひ、一度実際に検索してみることをお勧めします。
「ヨーグル」で検索すると、「ヨーグルッペ」(南日本酪農協同)のように頭に「ヨーグル」が来るものもあれば、「ごきげんよーぐると」(味覚糖UHA)のように後ろに付くものも出てきます。
頭に「ヨーグル」があるものだけ見ると、株式会社明治を出願人とするものが最も多く、「ヨーグルジョイ」や「ヨーグル人」などがあります。以下出願件数順に、南日本酪農協同(「ヨーグルタイム」など)、雪印メグミルク(「ヨーグルメット」など)、森永乳業(「ヨーグルトサプリ」など)、コカ・コーラ(「ヨーグルジー」など)と続いています。ヨーグルトを主力製品とする乳業メーカーが上位に並ぶのは、当然のことでしょう。
ところで、特許庁に出願されたものすべてが、商標として認められて登録されるわけではありません。特許情報プラットフォームでは、出願された商標の審査記録も調べることができます(下写真)。
ここにあげた例では、出願から約半年後に「拒絶理由通知書」が届いています。この書類には、商標として認められない理由があげられていますが、「手続補正書」の提出により問題点が解消され、最終的に商標として登録されています。もちろん、商標として認められない場合もあります。
では、どのようなものが商標として認められないのでしょうか。もちろん過去に同一あるいは類似のものが登録されていれば基本的には認められませんが、似たような名称でも、「商品や役務が非類似」であれば、商標として認められます。この辺の事情は、「a-iペプチドとAIペプチド」で解説しましたので、そちらをご覧ください。
しばしば拒絶理由になるのが、「記述的商標」というものです。記述的商標とは、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」のことです。以前、「サラ牛・ペプ牛・GABA牛」で、「サラ牛」や「ペプ牛」は認められても、「GABA牛」は難しいという話を書いたことがありました。
「ヨーグル」を含む名称の場合でも、「ヨーグル糖」や「ヨーグルッペ」といった固有名詞的なものは、商標として認められやすいようです。ただ、「これがヨーグルトだなんて」(森永乳業)、「ヨーグルトの国の自信作」、「ヨーグルトだからできること」、「未来に差がつくうるおいヨーグルト」(いずれも明治)のようなかなり記述的なものも商標登録されている例があり、一概には言えないようです。
「ヨーグル」をキーワードとして商標を検索すると、「ヨーグル豚」のようなちょっと意外なものも見つかります。これは朝霧ヨーグル豚販売協同組合(静岡県)が出願人となっている商標で、ヨーグルト状に加工した特別な飼料を使って育てた豚から得た肉とのことです。他にも、「ヨーグルトとお米で育った信州高原豚」(しらかば農園)や「ヨーグル鶏」(十文字チキンカンパニー)なども、商標として登録されています。製品のネーミングで悩んでいる場合、特許情報プラットフォームを検索すると、ヒントが得られることもあるでしょう。
食品のトピックス | 11:57 | 2019.07.25 Thursday |