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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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飲むおにぎり

No.292


 今年3月(2019/3)に、「飲むおにぎり」という製品が登場しました。注目していた製品ですが、私の住む青森県十和田市では目にする機会がありませんでした。しかし、発売から半年を経て、自宅近くのスーパーにも配架されるようになりました。


 ゼリー飲料によく使われているスパウト(飲み口)付パウチ容器を使った製品です(上写真)。この製品のプレスリリースには、開発背景として「おにぎりは日本の国民食で、単身世帯のおにぎり購入数は年間48個にのぼり、年々増加しております。」とあります。


 中身をお皿に少し出して撮ったのが、上の写真です。左が「梅こんぶ」で、右が「梅かつお」です。あまり食欲をそそるものではありませんが、本来、中身を目にしながら食べる食品ではありません。実際に食べてみたところ、私は「梅かつお」は結構いい味だと思いましたが、ご飯がやや固いところが惜しまれました。


 パッケージには、「朝忙しい時に 夜お夜食に」とありますが、本物のおにぎりにはかなわないというのが率直な感想です。ただ、プレスリリースには、「おにぎりが保存食・非常食として家庭内備蓄品の選択肢のひとつとなるよう開発しました。」とあり、これには頷けます。1年間の常温保存が可能なおにぎりというのは画期的です。


 今回紹介した「飲むおにぎり」ですが、製品化の際にネーミングはどのようなものが検討されたのかが気になります。「おにぎり」という言葉を使えば、製品コンセプトは明確に伝わりますが、どうしても本物のおにぎりと競合してしまいます。1971年に誕生した超ヒット食品である「カップヌードル」は、「ラーメン」という言葉を使わなかったことも重要だったと言われています。カップヌードルは、まったく新しい食品として消費者に受け入れられました。


 一方で、1975年に同じ日清食品から発売された「カップライス」は、大方の予想に反してヒット商品とはなりませんでした。当時、私はかなり出来がよい製品だと思いましたが、普通に炊いたご飯と比べてしまうと、食感などが劣っていたのは否めませんでした。本物と比較されないような製品コンセプトやネーミングが必要だったのかもしれません。



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食品のトピックス | 11:32 | 2019.09.25 Wednesday |