2019.10.10 Thursday
バナナの危機
No.293
「バナナダイエットブームで品薄」という記事を書いてから、早いもので11年が経ちました。当時、「朝バナナダイエット」の爆発的なブームにより、バナナが入手難になったことが思い出されます。日本で一番消費量の多い果物の品薄は、大きな社会問題になりました。十分に熟していない青いバナナも、スーパーに並びました。
最近、「バナナが絶滅するかもしれない」というニュースを目にします。アジアやアフリカのバナナ農園に大打撃を与えてきた真菌が、とうとう世界のバナナ輸出市場の中心地であるラテンアメリカに上陸してしまいました。今年8月(2019/8)、「トロピカルレース4」(TR4)と呼ばれる真菌が検出されたため、コロンビア政府は国家非常事態宣言を発令しました。この真菌に感染したバナナを人間が食べても危険はありませんが、やがてバナナの木は実をつけなくなります。なお、コロンビアの国旗の黄色は、バナナではなく黄金を意味しているそうです。
現在、全世界で流通しているバナナの99パーセントは、「キャヴェンディッシュ」という品種です。単一品種の栽培は、作物を効率的に育てることができ、安価なバナナの流通を実現しました。しかし、病害の蔓延には滅法弱いという一面があります。残念ながら、現状ではTR4によるバナナ全滅の危機を救う手立てはないという悲観的な状況のようです。
バナナの魅力のひとつに、リンゴなどのようにナイフで皮を剥く必要がないことがあります。実際、欧米のアグリバイオ企業では、簡単につるっと皮が剥けるリンゴやナシの品種開発を進めていて、バナナに代わってこういった果物が台頭するのかもしれません。ただ、いくら皮が簡単に剥けても、バナナの味はしません。
今後、日本で開発されそうなものとして、「フェイクバナナ」があります。フェイク食品は、日本のお家芸とも言えるもので、カニカマ(蟹蒲)など、レベルの高い製品が世界的に普及しています。実際、バナナでも、でんぷんに香料や着色料などを加えることにより、すでに技術的にはかなりバナナに似た食品を作ることは可能になっているそうです。
今年の8月(2019/8)に、ドイツ・ポツダムで開催された国際学会に出席しました。ベルリンやポツダムのホテルに泊まったときに、感じたことがありました。それは、朝食のバッフェ会場に行くと、妙にたくさんのバナナが積んであることでした。東西冷戦の時代、東ドイツではバナナを手に入れることができず、バナナは東西統一の象徴的なものだそうです。ベルリンの壁(下写真)が崩壊し、旧東ドイツ地域でバナナが容易に手に入るようになってから、すでに30年近くが経っています。しかし、バナナは今でもこの地域では、特別な果物のようです。
食品のトピックス | 12:00 | 2019.10.10 Thursday |