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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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食品の魅力は、なんと言っても「おいしさ」

No.3


 体に良い食品が、大人気です。テレビ番組で取り上げられたその日から人気が沸騰して、スーパーの棚が空っぽということもよくあります。しかし、多くは一過性のもので終わってしまっています。ポリフェノールを多く含むことから注目された赤ワインは、今でも人気がある食品ですが、むしろ例外かもしれません。多くの皆さんは、体に良いという話を耳にすると、その食品を試したがりますが、たいていは長続きしません。これは、私たちは基本的に「おいしい」食べ物しか食べないということだと思います。赤ワインが好きな方は、ポリフェノールが入っているということで、さらに好きになったのでしょう。結局、体に良いと言っても、食品である限りおいしくなければなりません。

食品の魅力イメージ1
 この食品にとって大切な「おいしさ」を決める重要な要因として、基本5味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)があります。しかし、おいしさというのは、非常に複雑なものであり、味だけでな く、食感、香り、色・形、さらには環境や食体験など様々な要因が関わっています。学校給食のように高級食材を使用していないものでも、皆で楽しく食べればおいしくなります。「懐かさ」といったものもおいしさの要因となりますから、「おふくろの味」もとてもおいしく感じられます。もしかすると、「体に良い」という話を聞くことにより、その食品をおいしく感じられる方もいるかもしれません。

食品の魅力イメージ2
 京都大学の伏木教授は、おいしさ研究の第一人者で、おいしさに関する著書も多い先生です。その中で、『グルメの話 おいしさの科学』(恒星出版)は、読み物としても抜群に面白いものですので、おいしさに関心がある方には是非読んでいただきたい一冊です。その伏木先生によると、食べ物のおいしさは大きく4つに整理されるそうです。

 まず、「生理的なおいしさ」があり、動物や人間は欠乏している栄養素を摂取したときに快感を覚え、有害な物質に対しては不快感が生じ、適切な食物を選択することができます。人間は、他の動物よりも栄養素の欲求を感じる能力が衰退しているそうですが、それでも極端に欠乏しているものを摂取したときには満足感が得られるとのことです。2番目には、「薬理的なおいしさ」があげられます。これは、糖・脂肪・タンパク質といった人間にとって必要不可欠な物質を摂取したときに、快感が得られるシステムによるものです。3番目として、「情報がリードするおいしさ」があります。たとえば、ある食品が、安全だという情報をもっていれば、私たちは安心しておいしさを楽しむことができますが、「わからない」ものに対しては警戒心を持ってしまいます。今日、テレビなどを介した食情報が氾濫しており、おいしさも情報の洪水の中で翻弄され気味です。4番目として、「文化に合致したおいしさ」があげられますが、日本の風土に根ざした独特の食文化やそれぞれの地域の食習慣などによるものです。米飯を主食とする食生活や、味噌や醤油といった伝統的発酵食品の利用などが、これに当てはまります。

食品の魅力イメージ3
 おいしさを判断するのに重要な「味覚」の機能の発達は、人間では12歳頃にピークを迎えてしまいます。昨今、「食育」の重要性が叫ばれていますが、子供たちの味覚をきちんと磨かせて、食への関心を適切に高めてあげることはとても大切なことです。また、機能性食品と呼ばれる体に良い食品の開発が、多くの食品メーカーによって盛んに行われていますが、「おいしくて体に良い」長く愛される食品を誕生させることも重要でしょう。
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食品のトピックス | 14:28 | 2007.09.05 Wednesday |