<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< 食品の魅力は、なんと言っても「おいしさ」 | main | ペプチドは、おいしい!? >>

「機能性ペットフード」の可能性

No.4


 私たちの健康維持や疾病予防に役立つ食品として、「機能性食品」があります。日本では、平成3年に「特定保健用食品制度」が発足し、世界に先駆けて法的なお墨付きのある機能性食品が数多く登場してきました。特定保健用食品(通称:トクホ)の登場により、消費者が安心して選択できる「体に良い」食品が増えたのは、大きな前進と言えるでしょう。いまだに、怪しげなものも少なからず存在するいわゆる「健康食品」市場の中で、トクホは非常に大きな役割を果たしています。

特定保健用食品ロゴ
 ところで、近年、犬や猫といった愛玩動物の社会的な存在意義が著しく向上してきました。単に、家族の一員として大切にされるだけはなく、アニマルセラピーなどで大活躍している場合も多くあります。このような状況で、犬や猫の健康に大きな影響を及ぼす「ペットの食」にも非常に大きな関心がもたれるようになっています。スーパーや量販店のペットフードコーナーには、驚くほど多種類のドッグフードやキャットフードが並べられています。犬や猫の健康に役立ちそうなことが表示されている製品も、とても多く見られます。

ペットフードイメージ
 ヒトの食品は、食品衛生法等により品質が確保されています。また、乳・肉・卵といった家畜の生産物は、私たち人間が摂取することにより、健康に直接影響を及ぼすため、家畜の飼料も、飼料安全法による規制が存在します。しかし、わが国では、ペットフードを直接規制する法律は制定されておらず、ペットフードの品質は主に業界団体(ペットフード工業会)の自主規制に委ねられてきました。ペットフード公正取引協議会が、「不当景品類及び不当表示防止法」に基づいた、「ペットフードの表示に関する公正競争規約」を定め、ペットフードの適正表示を推進してきましたが、これも適正表示に限定したものです。

 ペットやペットフードの重要性が高まる一方で、このような現在の状況は問題があると言わざるを得ません。しかし、最近では、メラミンを含む中国産原料を使用したペットフードの安全性が問われたことにより、マスコミや国もペットフードの品質に大きな関心を示すようになってきています。ペットフードの安全性を確保するための法律が制定されるのも、それほど遠い先の話ではないかもしれません。

法律文書イメージ
 ヒトの機能性食品に相当するペットフードの名称として、一般的なものはまだないようですが、ここでは「機能性ペットフード」と呼ぶことにします。ペットフード全般を対象とする法律がないのですから、当然のことながら、ヒトの特定保健用食品制度のように法制化された機能性ペットフードに関する制度は存在しません。ただし、「薬事法」は動物薬も対象としていますから、医薬品的な効果効能を表示しているペットフードは薬事法に抵触します。

 犬や猫の健康に役立ちそうなペットフードは、すでに多くのものが登場しています。デンタルケア、消化吸収改善、アレルギー対応、ヘアボールケア、尿路疾患対策、食欲増進、体重管理、ストレスケア、といったことを直接的あるいは間接的にうたっているものが目に付きます。サプリメント類も、徐々に市場を拡大しており、粉末、タブレット、飲料といった形態のものが種類を増やしてきています。しかし、こういったものの中から、本当に良い製品を見つけ出すことは、なかなか難しそうです。実際に犬や猫を対象とした摂取試験を繰り返し、データの蓄積のあるペットフードもあれば、単に「実験動物やヒトでのデータがあるから」という理由で、ヒトの食品に用いられている機能性成分を配合しているだけのイメージ製品に近いものもあります。現時点で、私たちが優れた機能性ペットフードを手に入れるには、製品開発に際して得られた科学的データを開示している良心的メーカーの製品を選択するしかなさそうです。

研究イメージ
 今後、機能性ペットフードが健全な発展をしていくためには、消費者の厚い信頼を獲得しなければなりません。そのためには、やはり、特定保健用食品制度のようなものがペットフードにも必要だと思われます。愛犬家や愛猫家の多くは、良質な機能性ペットフードを求めていると考えられます。それに応える責務が、業界や国にはあるのではないでしょうか。

 また、ヒトの食品と異なり、犬や猫は、おいしくないものは食べてくれません。私たち人間は、よく「頭で食べる」といったようなことを言います。まずくても体に良いということで、健康のために我慢して食べることもあります。しかし、これはペットフードには通用しません。ペットフードの場合、「おいしくて体に良い」ということがヒトの食品以上に求められそうですから、ペットフードの開発に携わる方々はたいへんです。
この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
155:ペットフードと乳酸菌(2013/12/25)
154:ペットフードの書籍を監修(2013/12/10)
153:ネコにタウリン(2013/11/25)
152:ペットフードの歴史(2013/11/11)
136:「a-iペプチド」とキャットフード(2013/03/12)
70:気になるペットビジネス(2010/06/11)
68:「猫にマタタビ」の科学(2010/05/10)
27:機能性食品の可能性と限界(2008/08/25)
24:ペットフードと特許(2008/07/09)
21:産学官連携でペットフード開発(2008/05/26)
10:ペプチドは魅力的なペットフード素材(2007/12/10)
7:ペットフードの安全性確保を巡る情勢(2007/10/26)
ペットフードのトピックス | 15:05 | 2007.09.07 Friday |