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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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食育の大切さを考える

No.12


 「朝ご飯にガムを食べてきた」と平気な顔をして言う小学生がいるそうです。これは、『亡食の時代』(産経新聞「食」取材班, 扶桑社新書)という本の中で紹介されていた話です。ちょっと信じがたいような話ですが、この類の話は、最近の学校現場では珍しくないとのことです。色々な面において、とても気になる話です。このような状況もあることから、今回は、「食育」について考えてみたいと思います。


 以前にも触れましたが、マスコミからの食情報は洪水のように溢れています(トピックス:「食情報の洪水の中で」参照)。しかし、その一方で、若い人たちがあまり食に対して関心を持っていないことを、しばしば感じさせられます。大学に入学したばかりの一年生諸君のほとんどが、「食の安全」や「食と健康」といった問題に対する意識が希薄ですし、日本の食料自給率が驚くほど低いこともあまり知りません。ただ、彼らにじっくりとこの種の話をすると、それなりの関心を示してくれます。別の見方をすれば、テレビや新聞では年中こういった問題を取り上げているものの、彼らの周りの人間(家族や学校の先生)は、あまり話題にしてこなかったということなのかもしれません。「食育」は、まず「食」に対して関心を持つことから始まるものだと思います。家庭や学校で、できるだけ「食」を話題として取り上げていただきたいものです。


 先日、私どもの大学の公開講座で、服部幸應先生(学校法人 服部学園 理事長)を講師にお招きして、『食育のすすめ ―大切なものを失った日本人―』という講演をしていただきました。服部先生は、平成17年に施行された「食育基本法」の誕生に尽力されると共に、講演活動等を通して、現在も食育の啓蒙に努力されています。内閣府は、「食育」を「食の知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てるもの」と定義しています。また、食育基本法の前文には、「先人からはぐくまれれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の『食』が失われる危機にある」とあります。いずれもとても重要なことを言っていますが、ちょっと難しくもあります。服部先生の講演はわかりやすく、食育に対して明確なイメージをもつことができるものでした。


 服部先生は、食育の3つの重要なポイントとして、「選食力を養う」、「食文化を大切にする」、「地球の食を考える」をあげています。特に「選食力」は、私たちの健康に直接関わるものでもあり、その大切さを強調されていました。食を選択するという行為は、様々な場面で求められます。たとえば、私たちが「食肉や食肉製品とどのように付き合っていくか」、ということを考えるときも、各自の健康状態や体質などを考えて、一人一人が答を出さなければなりません。また、最近では「牛乳有害論」というものも騒がれていますが、かなり怪しい学説(?)の紹介が目に付きます。マスコミ情報に翻弄されずに、自分の判断で食を選ぶことができる力を、「選食力」と言ってもよいでしょう。


 昨今、食育は企業の活動の一つとしても重視されており、朝食メニューの提案などが行われています。朝食について言えば、大学でも朝食を摂らない学生が多いことを心配して、指導を始めたところが結構あります。朝食を摂ることの大切さは、分かりやすいこともあってか、「食育=朝食摂取」というイメージを持っている方も少なくないようです。幸いなことに、ごく最近の調査結果によると、朝食を食べる大学生が少し増えてきたそうです。これは、食育活動の成果なのかもしれません。食育のさらなる浸透に期待したいものです。食育を解説した書籍が数多く出されていますが、服部先生の著書である『はじめての食育』(ローカス)と『味覚を磨く』(角川oneテーマ21 角川書店)をあげておきます。


本稿は、伊藤ハム株式会社の広報誌「躍進」(2008年1月号)に掲載していただいた原稿に加筆したものです。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
138:ウンチの本(2013/04/11)
69:変な給食(2010/05/25)
28:農医連携シンポジウム(2008/09/10)
8:食情報の洪水の中で(2007/11/09)
食品のトピックス | 12:30 | 2008.01.09 Wednesday |