2008.03.10 Monday
大学は美味しい!!
No.16
今回のタイトルだけをご覧になると、大学は「美味しい」話が多いところかと誤解される方もおられるかもしれません。しかし、昨今の大学は、非常に厳しい環境に置かれており、「斜陽産業」と言われたりすることさえあります。そういった状況なので、そうそう美味しい話などあろうはずもありませんが、そんな中での「美味しい」話です。
雑誌『DIME(ダイム)』(小学館)で、『大学は美味しい!!』という連載があり、大学が研究開発に関わった「美味しい食品」の数々が紹介されました。最近、この好評連載が、『DIME増刊 食の学園祭 大学は美味しい!!』として1冊にまとめられました。これとほぼ同時に、高島屋新宿店では、『大学は美味しい!!』フェアも開催されました(2008/2/16〜20)。
このフェアは、たいへんな盛況だったそうです。私は行けなかったのですが、残念でなりませんでした。フェア参加24大学の中には、わが北里大学も入っており、前回のトピックス「チザイの人」でも取り上げた北海道の附属八雲牧場で生産された牛肉を利用した製品が、紹介されました。用意したコーンビーフやビーフカレーなどのオリジナル製品は大人気で、あっという間になくなってしまったとのことです。ちなみに、八雲牧場で生産されたヘルシーな牛肉(北里八雲牛)は、北里大学病院に入院されている患者さんの食事にも利用されており、評判もよいようです。なお、このフェアの詳しいレポートを、大手予備校「早稲田塾」のホームページにある「大学プロデューサーズ・ノート」で見つけました。写真もたくさん載っているので、フェアの様子がよく伝わってきます。
今回のフェアに限らず、最近、大学が開発した食品がよく話題になりますが、こういったものはかなり古くからあったのではないでしょうか。畜産学系の大学に行くと、そこで作った乳製品や肉製品を、お土産にいただいたりしたことがありました。しかし、これまでは作られる量も少なく、積極的に宣伝する必要はなかったのかもしれません。最近では大学の広報活動が盛んになり、大学自体を世の中(受験生?)にPRするために、こういった大学開発製品を利用している面があるように感じられます。
戦前、沖縄には黒麹菌を使った泡盛がありましたが、激しい沖縄地上戦のために途絶えてしまったそうです。東京大学に保存されていた黒麹菌のアンプルを開封して、酒造メーカーとの共同で当時の黒麹泡盛が再現できた話は、新聞やテレビでも取り上げられました。現在、東京大学本郷キャンパスの「コミュニケーションセンター」で一番の人気商品として、幻の泡盛『御酒(うさき)』が販売されています。
また、神戸大学の附属食資源教育研究センターでは、但馬牛(黒毛和牛)の研究を精力的に進めてきましたが、その成果である「神戸大学ビーフ」の販売を2005年から始めています。三越本店(日本橋)では、いつも完売の人気だそうです。三越広報部では、「味もさることながら『大学が作っている』という安心感が、食の安全に敏感な消費者に受けたのでは」と分析しています。
今日、大学に対して、毎日の生活に直接役立つ研究成果や情報発信が、強く求められてきていることが感じられます。これから大学が、厳しい環境の中で評価されて生き残るためには、まだまだ私たちの努力は足りないのかもしれません。フード・ペプタイド社のような大学発ベンチャーも、そういった目に見える成果や情報を発信する一端を担えるのではないかと考えています。
食品のトピックス | 09:40 | 2008.03.10 Monday |